夢の終わりに

第 31 話


「質問があれば聞いてくれ、ルルーシュ・ランペルージさん」

ものすごく不愉快そうな表情で睨みつけてくる美人に俺は言った。

「そうだな、強いて言うなら俺の背中に張り付いている犬は何だ?」

予想的中で、トータル4時間ほどかかって蘇生したルルーシュが目を覚ましてからずっと、後ろからルルーシュを抱きしめて離さないやつがいて、意味が解らないと言いたげにルルーシュはうめいた。
うん、解るぞその気持ち。
俺も何でこんな状態か解らんからな!

「犬って。気持ちはわかるけどさ。おいスザク、いい加減離れろ」
「やだ、離れない」

ルルーシュの肩に顔を埋めていたスザクは、嫌だいやだと首を振りながらその両腕に力を込めた。かなり苦しいのだろう、ルルーシュの表情が歪むし、顔色が悪くなった。

「お前ルルーシュ嫌いなんだろ?」
「嫌いだよ、大っ嫌いだ」
「・・・嫌いか。なら離れろ」

ここまでベッタリされてるのに、嫌いって言葉に反応して傷ついた目をするなよルルーシュ。どう考えてもおかしいだろ、お前嫌われてないよ。俺が保証する。

「なあスザク。ルルーシュ蘇生したばっかだぞ。また殺す気か?」

この言葉はかなりの威力があったらしい。
ハッとなり顔をあげたスザクは、「ルルーシュ具合悪いの!?横になろう、ね?無理は駄目だよ!」と、ルルーシュの背中から離れると寝かせにかかったので、俺もルルーシュもうんざりした顔をした。いやいや、お前が全力で抱きしめたら骨が折れるだろうが、窒息するだろうが。それを問題視してるんだと言いたいが、死にそうなぐらいおろおろしているスザクにそれを言う勇気は無かった。
ルルーシュも同じらしく、こいつをどうにかしろと俺を睨んでくるが、自分からスザクを拒絶する様子はない。
これで悪逆皇帝だったルルーシュが嫌い?むしろ恨んでます?何処がだよと俺はつっこみたいのを我慢する。

「他人の空似、生まれ変わり、神の悪戯と俺も色々な可能性は考えていた。何よりお前たちの年齢は、お前たちが死亡した頃の年齢に近いから、神がの下らない悪戯の可能性を考えていたが、まさかコードを継承していたとはな」

だが、今思えばそれが最も可能性の高い物だったとルルーシュはため息をついた。おそらく、こいつのことだからコードの可能性も考えてはいたんだろうが、不老不死の地獄に俺たちが落ちていると思いたく無かったのかもしれない。

「・・・なあ、お前もスザクも神様信じてるわけ?」

神の悪戯とか、神に取り込まれてとか、まるで神が存在するかのようにいうが、少なくても俺は神様に会ったことなんてない。もしいるなら、不老不死の体をどうにかしてくださいってお願いするところだ。・・・ん?俺らみたいなのがいるなら神もいるのか?

「リヴァルお前、神を見ていないのか?」

コードを持っているのに?と不思議そうに聞かれた。いや待って、冗談だろ?いるの?神様って?まじで言ってんの?

「は?いやまて、マジでいるような言い方するのやめてくれ」
「いるぞ、神は。なあスザク」
「うん、僕も見た事あるよ」
「は!?ってか何でルルーシュはスザクが神を見てるとか知ってるの!?」

当たり前のように返してくる二人に俺はつっこみを入れた。
お前ら本当は前から互いに不老不死って知ってたんじゃないだろうな!?

「神の座に俺が行った時、スザクもいたからな」
「なつかしいね。まだ僕がナイトオブセブンだった頃だ」

そりゃまた懐かしい話だ。
スザクがナイトオブセブンだったのは1年ほどの間だからな。

「ってまて!お前らその時にコード貰ったんじゃないのか!?」

神様から直接!

「いや、おそらくあの時受け取ったとしたら俺だろうな」
「あー、シャルル皇帝からかな?ということはV.V.のコード?」
「あのくそ親父が消滅した事がずっと気になっていた。あれはコードを失ったから消えたと考えた方が自然だろう?」
「そっか、不死なら消えないかもしれないもんね」

スザクまで同意を示すが何の話かさっぱりだ。解る事は、シャルル皇帝がコードを持っていて、それをルルーシュが受け継いだってことぐらいか。となるとスザクはどうなるんだ?ルルーシュから受け継いだなら、ルルーシュが不死になるのおかしくないか?
そんな俺の疑問にルルーシュは気づいてくれた。

「そもそも、コードユーザーが所持できるコードは一つだけではない」
「は?」
「え?何それ?」
「あのくそ親父はV.V.のコードとC.C.のコード二つを所持しようとしていた。結果的に失敗はしたが、あの様子ではおそらく可能だっただろう。一人で複数のコードを取り込む事が可能ならば、反対に持っているコードを分ける事も可能だろう。俺は以前100を超える子供の額にコードが浮かんでいる映像を見たが、C.C.が数百年生きて知り得たコードユーザーは両手に満たないという。つまり何かしらの理由により数が減ったという見方もでき、その減った理由がユーザー同士で行われるコードの譲渡の可能性があると俺は見ている。そもそもC.C.、V.V.はイニシャルで名乗っていたが、これは本名から来るものではなく、頭に浮かんだ文字を名乗ったものだ。死から蘇生してから俺は自分がLだと理解している。お前たちの頭にも一文字浮かんでいるはずだ。おそらく、あのくそ親父はWだっただろう。俺が12文字目のLそして22文字目のV、23 文字目のWと並べばそこから推測は簡単で、そこから何故22文字目のVが3文字目のCを欲したのか、何故Vのコードだけではアーカーシャの剣、いやラグナレクが成功する確率が低くなるかと」
「うわー!まてまてまてまて!長い!説明長い!くそ長い!わけがわからないってば!もっと短く解りやすくたのむ!」

俺は慌ててルルーシュの言葉を遮った。
やばい、全然頭に入ってこないぞ。

「大事なことしか話してないぞ。大体一から十まで説明するなら一日二日では終わらないからな」
「勘弁してくれよ!ほら、スザク見てみろよ、完全にもう話聞いてないぞ!?」

これで大事な所だけって冗談だろ!?と思いながらスザを巻き込む。

「え?」

キョトンとした顔で、何で呼ばれたのって顔をしている時点で、俺たちのやり取りすら耳に入ってない事がわかった。それにしてもお前、今気付いたけどルルーシュの傍にいると表情豊かだよな。俺といると無表情多いのに。なにそれ、俺も友達だろ!?傷つくよ!?

「そんな事は無いだろう?今俺が何を話していたかお前、理解しているよな?」

お前なら分かってくれるだろ?とにっこり笑顔で言うが、スザクの目が宙を泳いだのを見て表情を硬くした。

「え?えーと・・・」
「ほら見ろ!全然だめじゃん!」
「くっ、俺の周りはどうしてこう馬鹿ばかりなんだ」

うわ、こいつ責任転換しやがった。

「馬鹿って酷くないか!?あーもーわかった。馬鹿でも理解できるよう簡潔にお願いしますルルーシュ先生!」

お馬鹿な生徒に愛の手を!

「・・・仕方がない。いいか、コードは一人でいくつも取り込む事が出来るし、コードを分け与える事も出来ると考えられる。俺の文字はLだが、リヴァルはD、スザクはWなんじゃないか?」

言われてみればDの文字が俺の心に刻まれていた。つまりC.C.風に名乗るなら、俺はD.D.になるらしい。俺はその推測に間違いは無いと頷く。
スザクも同じように頷いたから、あいつがWなのも確定らしい。

「コードは他のコードを手に入れるか継承を行うことで成長する。いいか、ここから先はスザクにも解る足し算と引き算の話だ。22文字目のVのコードをシャルル、俺と受け継ぐ事でコードは成長し24文字目のXとなったが、今俺が持っているコードは12文字目のLだ。そしてスザクが持っているのは13文字目のW。そこから導き出される答えは一つ。俺は死の間際、英雄として永遠に生きろとスザクに言い、スザクは受け取ったと返した。それで契約が成立してしまったのだろう。俺の持つXのコードが二つに分かれ、スザクにLのコードが移動してしまったんだ」

ルルーシュはルルーシュで悪逆皇帝として永遠に生きるつもりだった。本当に生きるのではなく、歴史の中に、人の心の中にという意味でだが、コードはそこまで理解してはくれず、永遠に生きる事を胸に誓った二人の為にXのコードは二つの分かれた。
24のXが12のL2つになったのだ。
ギアスの成長とは精神の成長、王の力に耐え永遠を生きるための精神を育てるための試練のようなもので、スザクはギアスを手にしていなかったが、十分コードを受け継げる状態だった。主を失い友と敵対しフレイヤによる大罪を犯し、そこで壊れることなく世界平和のための人柱になったことでコードを受け継ぐ器と認められ、継承が成立し、LはMへと成長した。

C(3)+1=D(4)
X(24)-L(12)=L(12)
L(12)+1=M(13)

理解不能で解析不能な不老不死のコードのはずなのに、なんで簡単な足し算引き算で計算で説明がきるんだよと思うが、実際に俺はDでスザクがM、ルルーシュがLだから納得するしかない。
俺はかろうじて理解したが、スザクは相変わらず分かっていないような顔をしていて、ルルーシュが足し算でも駄目ならどうすればいいんだと呻いていた。それは説明の仕方が下手だからだとはとても言えない。後でこっそりスザクには説明しておこう。

「おそらくだが、奇数のときだけ分ける事が出来るのかもしれない。となれば俺とリヴァルのコードはさらに細分化され・・・」

ルルーシュはというと、スザクはともかく俺が理解したことで気をよくしたのか、更に話始めたが俺は聞いていなかった。まあ、そう言う事は全部ルルーシュに任せればいいからな。俺の専門外!

「で、これからどうするんだルルーシュ?ブリタニアには行くんだろ?」
「・・・ああ、このペースで行けば、ナナリーの誕生日までにブリタニアに入れるからな」
「ああ、伝説にまでなったナナリー様の墓参りですか~って、お前相変わらずだなぁ」

百年以上たつのに、まだシスコンなのはある意味凄いと思う。
ってか、あの墓に毎年行ってるの?それはそれで目立ってるんじゃないのか!?おいおい大丈夫かよこいつ。悪逆皇帝の幽霊が!とか言われてるんじゃないのか?

「何を言う。ナナリーの誕生日と・・・ロロの誕生日以上に大切な日などこの世に存在しない!」

俺の天使が産まれた記念日だぞ!!

「え!?僕の誕生日は!?」

お前凄いな、そこでナナリーに対抗するとか。

「知るか!」
「え!?ひどいよルルーシュ!?」

僕のも祝ってよ!というスザクは、何かもう・・・長年離れていた飼い主を見つけた犬のような状態でルルーシュにべったりだけど、これで飼い主が大嫌いって断言するんだよなぁ・・・信じられん。
まあ、ユーフェミア様の事もあるし、ゼロの事もあるから嫌いな理由も解らなくは無いけど、言動が真逆過ぎておじさんついていけないぜ。


俺が撃たれて殺されて。
この夢のような時間が最悪の終わり方をしたと思ったものだが、どうやらこの夢は目覚める事の無い悪夢だったらしい。永遠の地獄に落ちたのは俺だけじゃなかったという喜びと、こいつらも地獄に落ちたのかという悲しみとが入り混じった悪夢だ。

「まったくお前は。そんな事よりお前たち、今の説明が理解できなくても、コードの移動が可能だという事は理解したな?」
「それなりに?」
「なんとなく?」

俺たちの返答にルルーシュは頭を押さえた。

「つまりだ、コードを俺によこせ。それで人間に戻れる」
「は?やらないぞ?」
「え?やだ」
「おい、即答するな」
「なんでだよ?これからもお前らと旅が出来るんだろ?一人で生きる地獄は辛いけどさ、三人なら楽しいじゃん。な、スザク」
「そうだね、大体君を一人にしたら何をするか解らない」

だから嫌だ。断固拒否。スザクも絶対嫌だと顔に書いてるし、このスザクの暴走はルルーシュじゃ止められないと俺は思う。となれば、暴走スザクのストッパーになれる俺は必要だろう。
何より、こんな天然鈍感男をこれから先も一人にするなんて心配過ぎておちおち死んでられないって。

「折角死ねるチャンスなんだぞ。よく考えろ」
「考えたからだいじょーぶ」

むしろ考えれば考えるほどこのルルーシュを一人でなんて無理だし、このスザクと二人でってのも心配過ぎて無理だ。

「何処がだ!」
「考えても変わらないよ」
「お前はもう少し脳を使えこの馬鹿が!」

はいはい無理無理。

「で、出発は明日か?このホテルは明日までしか取ってないぜ?」
「明日でもいいけど、ルルーシュの体大丈夫かな?」
「いいか、これからまた100年200年と生きる事を考えろ。特にリヴァルはもう少しでモルモットになる所だったんだぞ?今まで無事だったから今後も無事とは限らないんだからな」

ルルーシュの体か。饒舌にしゃべってるけど、俺らより回復遅いのは確定だからな。出来るだけ負担にならないようにするべきだよな。

「車で移動すりゃいいんじゃね?三人なら買うのも手だぜ?」
「免許証とか困るでしょ」
「もし捕えられた場合、人体実験は当然行われることになる。人として扱われることなく、尊厳の踏みにじられるだろう」
「そこはルルーシュが上手くやるだろ」
「そうだね、ルルーシュよろしくね」
「お前ら、俺の話を無視しながら俺を巻き込むな」
「あーでも、ルルーシュが楽に移動できる車ってなると高そうだな」
「ルルーシュがお金出すからいいよ、どうせ荒稼ぎしてるんだろうし」
「俺抜きで話を進めるな!いいか、車で移動する場合はだな」
「ルルーシュの免許はいらないから、僕とリヴァルだけ用意してね」
「いいから話を聞け!!」

もう二度と見られないはずだった、人間だった頃の友人たちのやり取りを、俺は笑いながら聞いていた。


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リヴァルだけ不老不死、ルルーシュとスザクは死亡のBADENDも考えた上で28話まで進めてたけど、結局三人とも不老不死の仲良しENDになりました。ワンパターン!

おっさん設定生かせなさ過ぎて泣いた。

Xを割って11になるなら、「日本はエリア11!これは11という数字に意味が!?」とかやれるけど割ったら12なのでそれは出来なかった。残念。
※初代V.V.→V.V.で最低1回は移動してるので、数字が+1になるならV.V.はWかそれ以上になってしまうのでこの考え方には無理があります。

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